特別寄与料

令和元年7 月1 日以後に開
始する相続に係る相続税について適用

① 特別寄与者の課税関係
 特別寄与料は相続人以外
の親族から相続人に対して請求するものであ
り、被相続人から相続又は遺贈により取得し
た財産ではないものの、
・ 相続人と療養看護等をした親族との間の
協議又は家庭裁判所の審判により定まるこ
と、
・ 相続開始から1 年以内に請求しなければ
ならないこと、
・ 遺産額を限度とすること、

から被相続人の死亡と密接な関係を有し、経
済的には遺産の取得に近い性質を有します。
そのため、一連の相続の中で課税関係を処理
することが適当であると考えられます。また、
被相続人が相続人以外の者に対して財産を遺
贈した場合との課税のバランスをとる必要も
あります。そこで、特別寄与料に対しては、
(所得税や贈与税ではなく)相続税を課税す
ることとされました。
 上記のとおり、特別寄与料は相続又は遺贈
により取得するものではありません。一方、
相続税は相続又は遺贈により取得した財産に
課税するものなので、特別寄与料に相続税を
課税するために、相続税法上、相続人からの
特別寄与料の取得を被相続人から特別寄与者
に対する遺贈とみなすこととされました(相
法4 ②)。
 なお、特別寄与者の相続税の計算方法は、
相続人以外の者が遺贈により財産を取得した
場合と同様です。すなわち、法定相続人では
ないことから、基礎控除のうち法定相続人数
比例部分(600万円)の適用はなく、相続税
の総額を計算する際の法定相続分もありませ
ん。その後、受領した特別寄与料により相続
税の総額を按分し、特別寄与者の算出税額を
求めます。また、相続人ではないため、原則
として相続税額が2 割加算されます。これは、
特別寄与者が相続人でないという点で受遺者
(相続人を除きます。)と変わりなく、遺贈と
のバランスからも2 割加算の対象となるもの
です。
② 特別寄与料を支払った者の課税関係
 特別寄与料を支払った相続人については、
その支払いは被相続人の死亡に基因するもの
であり、遺産の中から支払うにせよ固有財産
から支払うにせよ、その支払った金額分は担
税力が減殺されることから、課税財産から減
額することが適当と考えられます。また、そ
うすることにより、相続人及び特別寄与者全
員の課税対象となる財産の合計が遺産総額に
一致します。
 具体的には、特別寄与者が支払いを受ける
べき特別寄与料の額がその特別寄与者に係る
課税価格に算入される場合には、その特別寄
与料を支払うべき相続人の課税価格は、相続
又は遺贈により取得した財産から特別寄与料
の額のうちその相続人が負担すべき金額を控
除した金額とされます(相法13④)。
 なお、上記の相続人が負担すべき金額は、
相続人が数人いる場合には、第900条から第
902条までの規定により算定した各相続人の
相続分を乗じた額を負担することとされてい
ます(民法1050⑤)。
③ 申告期限までに支払いが確定しなかった場

 特別寄与料について協議が調わないときは、
特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った
時から6 か月を経過したとき、又は相続開始
の時から1 年を経過したときまでに家庭裁判
所に処分を請求することとされており(民法
1050②)、その後、特別寄与料の支払いが確
定することになります。一方、相続税の申告
期限は相続の開始があったことを知った日の
翌日から起算して10か月以内であるため、具
体的な特別寄与料が決定されるのは、申告期
限後となる可能性があります。そのため、特
別寄与料を取得し、相続税法第4 条第2 項の
規定により新たに相続税の納税義務が生じる
者の申告期限は、特別寄与料の支払額が確定
したことを知った日の翌日から10か月以内と
する規定が設けられました(相法29①)。ま
た、申告期限までに特別寄与料以外の財産を
遺贈により取得し、申告を済ませている場合
も同様に、特別寄与料の支払額が確定したこ
とを知った日の翌日から10か月以内に修正申
告をしなければならない規定が設けられまし
た(相法31②)。
 他方、特別寄与料を支払うこととなった相
続人については、申告期限までに取得した財
産について既に申告を済ませている場合には、


特別寄与料の支払額が確定したことを知った
日の翌日から4 か月以内に更正の請求ができ
る規定が設けられました(相法32①七)。


⑶ 適用関係
 上記⑵の改正は、令和元年7 月1 日以後に開
始する相続に係る相続税について適用されます

自筆証書遺言の保管制度

ハ 公的機関(法務局)における自筆証書遺
言の保管制度の創設(法務局における遺言
書の保管等に関する法律)

は令和2 年7 月10
日から、施行される予定

自筆証書遺言の方式緩和

③ 遺言制度に関する見直し
イ 自筆証書遺言の方式緩和
 自筆でない財産目録を添付して自筆証書
遺言を作成できるようにする(民法968)

平成31年1 月13日から施行

小規模宅地等改正1年,2年

① 特定事業用宅地等の範囲の見直し

平成31年4 月1 日以後
に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税
について適用


 特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前
3 年以内に新たに事業の用に供された宅地等
(その宅地等の上で事業の用に供されている
次に掲げる資産(その事業の用以外の用に供
されていた部分がある場合には、その事業の
用に供されていた部分に限ります。)で、被
相続人等が有していたものの相続開始の時の
価額が、その宅地等の相続開始の時の価額の
15%以上である場合を除きます。(注))が除
外されました(措法69の4 ③一、措令40の2
⑧)。
イ その宅地等の上に存する建物(その附属
設備を含みます。)又は構築物
ロ 所得税法第2 条第1 項第19号に規定する
減価償却資産でその宅地等の上で行われる
その事業に係る業務の用に供されていたも
の(イに掲げるものを除きます。)
(注) これは、小規模宅地特例の平均的な減
税効果(宅地価額の概ね15%程度と推
計)を上回る程度の投資を行った事業者
については特例が認められるよう配慮し
たものです。
 ただし、被相続人が相続開始前3 年以内に
開始した相続又はその相続に係る遺贈により
事業の用に供されていた宅地等を取得し、か
つ、その取得の日以後その宅地等を引き続き
事業の用に供していた場合におけるその宅地
等については、被相続人が相続により取得し
た事業用宅地等の上で事業を営んでいた期間
が3 年未満の場合であっても特定事業用宅地
等の範囲から除外されません(措令40の2 ⑨)。
 なお、小規模宅地特例の適用を受けようと
する宅地等が相続開始前3 年以内に新たに被
相続人等の事業の用に供されたものである場
合には、その事業の用に供されていた上記イ
及びロに掲げる資産の相続開始の時における
種類、数量、価額及びその所在場所その他の
明細を記載した書類でその資産の相続開始の
時の価額がその宅地等の相続開始の時の価額
の15%以上である事業であることを明らかに
するものを相続税の申告書に添付しなければ
なりません(措規23の2 ⑧)。
② 個人の事業用資産についての納税猶予制度
の創設に伴う所要の措置
 上記一のとおり、個人の事業用資産につい
ての納税猶予制度が創設されたところですが、
この納税猶予制度と小規模宅地特例とは、選
択制とされています。したがって、個人の事
業用資産についての贈与税の納税猶予制度の
適用に係る贈与者から相続又は遺贈により取
得(措置法第70条の6 の9 第1 項(同条第2
項の規定により読み替えて適用する場合を含
みます。)の規定により相続又は遺贈により
取得をしたものとみなされる場合における取
得を含みます。)をした特定事業用宅地等及

び個人の事業用資産についての相続税の納税
猶予制度の適用に係る被相続人から相続又は
遺贈により取得をした特定事業用宅地等につ
いてはこの小規模宅地特例を適用できない旨
が明記されました(措法69の4 ⑥)。


③ 配偶者居住権の創設に伴う所要の措置

令和2 年4 月1 日以後に
相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税に
ついて適用されます


 民法及び家事事件手続法の一部を改正する
法律(平成30年法律第72号)により、配偶者
の居住権保護のための方策として、配偶者が
相続開始時に居住していた被相続人の所有建
物を対象に、終身又は一定期間、配偶者にそ
の使用又は収益を認めることを内容とする法
定の権利が新設され、遺産分割における選択
肢の一つとして、配偶者に配偶者居住権を取
得させることができることとするほか,被相
続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権
を取得させることができるようになりました。
 この配偶者居住権は、借家権類似の建物に

ついての権利とされていることから、配偶者
居住権自体が小規模宅地特例の対象となるこ
とはありません。他方、配偶者居住権に付随
するその目的となっている建物の敷地を利用
する権利(敷地利用権)については、「土地
の上に存する権利」に該当するので、小規模
宅地特例の対象となります。なお、小規模宅
地特例を受けるものとしてその全部又は一部
の選択をしようとする宅地等が配偶者居住権
の目的となっている建物の敷地の用に供され
る宅地等又は配偶者居住権に基づく敷地利用
権の全部又は一部である場合には、その宅地
等の面積は、その面積に、それぞれその敷地
の用に供される宅地等の価額又はその敷地利
用権の価額がこれらの価額の合計額のうちに
占める割合を乗じて得た面積であるものとみ
なして計算をし、限度面積要件を判定します
(措令40の2 ⑥)。

個人の事業用資産についての納税猶予

1  概要
 特例事業受贈者が、平成31年1 月1 日から令和
10年12月31日までの間に、贈与により特定事業用
資産を取得し、事業を継続していく場合には、担
保の提供を条件に、その特例事業受贈者が納付す
べき贈与税額のうち、贈与により取得した特定事
業用資産の課税価格に対応する贈与税の納税が猶
予されます。

⑴ 特例事業受贈者の範囲
 贈与者から贈与により特定事業用資産の取得
をした個人で、次に掲げる要件の全てを満たす
者をいいます(措法70の6 の8 ②二、措規23の
8 の8 ③~⑥)。
① 贈与の日において18歳(令和4 年3 月31日
までは、20歳)以上であること
② 中小企業における経営の承継の円滑化に関
する法律第2 条に規定する中小企業者であっ
て同法第12条第1 項の経済産業大臣(同法第
16条の規定に基づく政令の規定により経済産

業大臣の権限に属する事務を都道府県知事が
行うこととされている場合には、当該都道府
県知事)の認定を受けていること
(注) この認定を受けるには、事前に下記⑦の
確認を受ける必要があります。
③ 贈与の日まで引き続き3 年以上にわたり特
定事業用資産に係る事業(当該事業に準ずる
ものを含みます。)に従事していたこと
(注) 特例事業受贈者は、贈与者(先代事業者)
の事業に従事していることが原則とされて
いますが、贈与者の事業に従事するために
学校に通っている場合や贈与者の事業と同
種・類似の事業を営む他の事業者のもとで
事業に従事している場合も、特定事業用資
産に係る事業に含まれることとされていま
す(措規23の8 の8 ⑤)。具体的には、個人
の診療所を承継するために大学病院で研修
医として従事している場合や料理店を承継
するために他店で板前修業をしている場合
などが考えられます。
④ 贈与の時からその贈与税の申告書の提出期
限まで引き続き特定事業用資産の全てを有し、
かつ、自己の事業の用に供していること
⑤ 贈与の日の属する年分の贈与税の申告書の
提出期限において、所得税法の規定により特
定事業用資産に係る事業について開業の届出
書を提出していること及び青色申告の承認
(みなし承認を含みます。)を受けていること
(注1 ) この開業の届出書の提出と青色申告の
承認の要件は、贈与税の申告書の提出期
限において満たしていれば足りるため、
特例事業受贈者が贈与者(先代事業者)
から事業を引き継ぐ前から自己が営む他
の事業について既に開業の届出書を提出
している場合や青色申告の承認を受けて
いる場合には、贈与者からの贈与後に改
めてこれらの手続をする必要はありませ
ん。
(注2 ) 本税制を適用するためには、対象資産
を整理し、リストを作成する必要があり、
猶予税額の計算上、これを適正に行うた
めには、事業用の資産・負債について、
極力明確な整理がなされている必要があ
るところ、青色申告者は、事業所得の金
額が正確に計算できるようにその事業所
得を生ずべき事業に係る資産、負債及び
資本に影響を及ぼす一切の取引を正規の
簿記の原則に従って記録し、その記録に
基づき、貸借対照表及び損益計算書を作
成しなければならないこととされている
ため、納税猶予の適用を受けようとする
者については(その先代事業者も含めて)
青色申告の承認を受けている者であるこ
とを求めています。
⑥ 贈与により取得した特定事業用資産に係る
事業が、贈与の時において、資産保有型事業
(注1 )、資産運用型事業(注2 )及び性風俗
関連特殊営業(注4 )のいずれにも該当しな
いこと
(注1 ) 「資産保有型事業」とは、贈与の日の属
する年の前年から納税猶予期間が終了す
るまでのいずれかの日において、特定事
業用資産に係る事業についての貸借対照
表に計上されている総資産の帳簿価額の
総額に占める特定資産(注3 )の帳簿価
額の合計額の割合が70%以上となる事業
をいいます(措法70の6 の8 ②四、措令
40の7 の8 ⑭)。ただし、資産保有型事業
に該当した場合であっても、その該当し
た事由が、事業活動のために必要な資金
を調達するための資金の借入れ等事業活
動上生じた偶発的な事由である場合には、
その事由が生じた日から6 か月間は資産
保有型事業に該当しないものとされてい
ます(措令40の7 の8 ⑭、措規23の8 の
8 ⑦)。
(注2 ) 「資産運用型事業」とは、納税猶予期間
中のいずれかの年(贈与の日の属する年
の前年を含みます。)において、特定事業
用資産に係る事業についての事業所得に

係る総収入金額に占める特定資産(注3 )
の運用収入の合計額の割合が75%以上と
なる事業をいいます(措法70の6 の8 ②
五、措令40の7 の8 ⑰)。ただし、資産運
用型事業に該当した場合であっても、そ
の事由が、事業活動のために必要な資金
を調達するために特定資産を譲渡したこ
と等事業活動上生じた偶発的な事由であ
る場合には、その事由が生じた日の属す
る年とその翌年は資産運用型事業に該当
しないものとされています(措令40の7
の8 ⑰、措規23の8 の8 ⑨)。
(注3 ) 「特定資産」とは、中小企業における経
営の承継の円滑化に関する法律施行規則
(以下「円滑化省令」といいます。)第1
条第26項第2 号イからホまでに掲げる有
価証券、不動産、預貯金、ゴルフ会員権、
貴金属等並びに特例事業受贈者及びその
関係者に対する貸付金・未収金をいいま
す(措規23の8 の8 ⑧)。
(注4 ) 「性風俗関連特殊営業」とは、風俗営業
等の規制及び業務の適正化等に関する法
律第2 条第5 項に規定する性風俗関連特
殊営業をいいます(措法70の6 の8 ②二
ヘ)。
⑦ 円滑化省令の定めるところにより都道府県
知事の確認を受けた個人事業承継計画に定め
られた後継者であること(措規23の8 の8
⑥)
(注1 ) この確認を受けるためには、認定経営
革新等支援機関(注2 )の指導及び助言
を受けて個人事業承継計画を作成し、令
和6 年3 月31日までに都道府県知事に申
請しなければなりません(円滑化省令16
三、17①④)。
(注2 ) 認定経営革新等支援機関とは、中小企
業等経営強化法の規定による認定を受け
た税務、金融及び企業財務に関する専門
的知識や支援に係る実務経験が一定レベ
ル以上の個人、法人、中小企業支援機関
等(税理士、公認会計士、金融機関、商
工会等)であって、中小企業に対して専
門性の高い支援事業を行うものをいいま
す。
⑵ 特例の対象となる事業の範囲
 この特例の対象となる事業は、小規模宅地特
例(措法69の4 )における特定事業用宅地等の
対象となる事業(措法69の4 ③一)と同一であ
り、その事業の範囲からは、不動産貸付業、駐
車場業及び自転車駐車場業が除かれています
(措法70の6 の8 ②一、措令40の7 の8 ⑤)。
⑶ 贈与者の範囲
 贈与の時前に特定事業用資産を有していた個
人で次に掲げる者(既にこの特例の適用に係る
贈与をしている者を除きます。)をいいます
(措令40の7 の8 ①)。
① 先代事業者であって次に掲げる要件を満た
す者(措令40の7 の8 ①一)
イ 贈与の時において所得税の納税地の所轄
税務署長に特定事業用資産に係る事業の廃
業届を提出していること又は贈与税の申告
書の提出期限までに廃業届を提出する見込
みであること
ロ 特定事業用資産に係る事業について、贈
与の日の属する年以前3 年間にわたり確定
申告書を青色申告書により所得税の納税地
の所轄税務署長に提出していること
(注) 所得税の青色申告制度では、事業所得
に係る一切の取引の内容を正規の簿記の
原則に従って記帳している者には65万円
(令和2 年以降は55万円)の特別控除が認
められ、それ以外の者については10万円
の特別控除が認められているところです
(措法25の2 )。この納税猶予制度の適用
を受けようとする者については、課税の
適正・公平のために正規の簿記の原則に
従って記帳している事業者が望ましいこ
とから、青色申告の承認を受けている者

のうち措置法第25条の2 第3 項の適用を
受けている者に限って納税猶予の適用対
象としています。
② 上記①の贈与者(先代事業者)と生計を一
にするその親族であって、上記①の贈与者か
らの贈与の後に特定事業用資産の贈与をして
いる者(措令40の7 の8 ①二)
(注1 ) 一般的に事業承継といえば、個人事業
者が有する自己の事業用資産を後継者に
承継させることをいうものと思われます
が、個人事業者の場合、配偶者等の親族
が有する資産を事業の用に供しているケ
ースも実在します。このように贈与者本
人が事業の用に供していなくてもその配
偶者等が事業の用に供していれば、広い
意味で贈与者の事業の用に供しているも
のとして考えられることから、実際に事
業をしていない者からの贈与についても
一定の場合には納税猶予の対象となる贈
与に含むこととしています。ただし、事
業承継はあくまで先代事業者からの承継
が前提であることから、事業をしていな
い者からの贈与については、上記①の贈
与者(先代事業者)からの贈与の後1 年
以内にされた贈与に限って納税猶予の適
用を認めることとしています。
(注2 ) 先代事業者が、個人の事業用資産につ
いての相続税の納税猶予(措法70の6 の
10①)の適用に係る被相続人である場合
には、当該先代事業者に係る相続の開始
後に特定事業用資産の贈与をしている者
も贈与者に含まれます

⑷ 特定事業用資産・特例受贈事業用資産の範囲
 特定事業用資産とは、贈与者(当該贈与者と
生計を一にする配偶者その他の親族等を含みま
す。)の事業(不動産貸付業等を除きます。)の
用に供されていた次に掲げる資産(贈与者の贈
与の日の属する年の前年分の事業所得に係る青
色申告書の貸借対照表に計上されているものに
限ります。)の区分に応じそれぞれ次に定める
ものをいいます(措法70の6 の8 ②一)。
 なお、ここでいう「贈与者」には、生計を一
にする配偶者その他の親族等を含むこととされ
ていることから、「贈与者の事業」は、贈与者
本人が営む事業のみならず、その生計を一にす
る親族が営む事業も含まれることになります。
したがって、贈与者が有する資産で、その生計
一親族の事業の用に供されていたものは、「事
業の用に供されていた資産」に該当することと
なります。
① 宅地等(土地又は土地の上に存する権利で
あって、建物又は構築物の敷地の用に供され
ているもののうち一定のものをいいます。) 
宅地等の面積の合計のうち400㎡以下の部分
(注1 ) 対象となる宅地等は、小規模宅地特例
(措法69の4 )における特定事業用宅地等
の対象となる宅地等と同一であり、耕作
又は養畜のための採草等の用に供される
ものが除かれる(措規23の8 の8 ①)と
ともに、棚卸資産に該当する宅地等及び
事業の用以外の用に供されている部分が
除かれています(措令40の7 の8 ⑥)。
(注2 ) 宅地等の面積については、事業を営ん
でいない個人との公平性を確保する観点
から、小規模宅地特例(措法69の4 )に
おける特定事業用宅地等と同様に400㎡を
上限としています。
② 建物(事業の用に供されている建物として
一定のものに限ります。) 建物の床面積の合
計のうち800㎡以下の部分
(注1 ) 対象となる建物からは、棚卸資産に該
当する建物及び事業の用以外の用に供さ
れている部分が除かれています(措令40
の7 の8 ⑦)。

(注2 ) 建物の面積については、宅地等の上限
面積(400㎡)と一般的に個人が事業を行
っていると想定される用途地域の指定容
積率の下限(200%)を踏まえ、800㎡を
上限としています。
③ 減価償却資産(②の建物を除きます。) 地
方税法第341条第4 号に規定する償却資産(注
1 )、自動車税又は軽自動車税において営業
用の標準税率が適用される自動車その他これ
らに準ずる減価償却資産(注2 )
(注1 ) 固定資産税の課税対象となる償却資産
は、土地及び家屋以外の事業の用に供す
ることができる資産(無形減価償却資産
を除きます。)を対象としている(地方税
法341四)ことから、固定資産税の課税対
象となっている償却資産は事業用資産で
ある蓋然性が高いと考えられます。
(注2 ) 「その他これらに準ずる減価償却資産」
とは、次に掲げる資産となっています(措
規23の8 の8 ②)。
イ  所得税法施行令第6 条第8 号に掲げ
る無形固定資産(鉱業権、漁業権など)
及び同条第9 号に掲げる生物(牛、馬、
かんきつ樹、茶樹など)
ロ  自動車税又は軽自動車税において営
業用の標準税率が適用される自動車以
外の自動車で、普通自動車にあっては
そのナンバーが1 、2 、4 、6 又は8
であるもの、軽自動車にあってはその
ナンバーが4 、6 又は8 であるもの
ハ  原動機付自転車、二輪の軽自動車、
小型特殊自動車(四輪以上のもののう
ち、乗用のもの及び営業用の標準税率
が適用される貨物用のものを除きます。)
 なお、上記イからハまでの資産に該当
しても、主として趣味又は娯楽の用に供
する目的で保有するものや事業の用に供
されていた部分以外の部分があるときは
その部分が除かれます。
 特例受贈事業用資産とは、贈与により取得し
た特定事業用資産のうち贈与税の申告書にこの
特例の適用を受けようとする旨の記載があるも
のをいいます(措法70の6 の8 ①)。
⑸ 適用対象となる贈与
 この特例の対象となる贈与は次に掲げる贈与
となっています(措法70の6 の8 ①)。
① 平成31年1 月1 日から令和10年12月31日ま
での間にされた贈与であること
② 先代事業者と生計を一にするその者の親族
からの贈与にあっては、①の期間内の贈与で
あって、先代事業者からの贈与又は先代事業
者の相続開始後1 年以内にされた贈与である
こと

従来の小規模宅地特例においては、①借入金
で事業用宅地を取得した上で、小規模宅地特例
を適用すると、相続税の課税価格を実質ゼロと
することが可能であり、②さらに、個人事業者
の債務には事業・非事業の区別がないため、当
該債務を他の非事業用資産と相殺することで、
事業と無関係な資産にまで節税効果が及ぶとい
った問題が指摘されているところです。こうし
た問題は小規模宅地特例に限られたことではな
く、個人の事業用資産についての納税猶予制度

の創設に当たっては、債務控除を利用した租税
回避を防止するため、事業用資産の価額から事
業用債務(=明らかに事業用とは認められない
債務を除いた債務)の価額を控除した価額をも
って猶予税額の計算をすることとされています

⑵ 経営承継期間
 非上場株式等についての納税猶予制度では、
事業承継後5 年間を経営承継期間として位置づ
け、都道府県知事の関与の下、承継後に円滑に
事業が行われているか確認し、経営承継期間経
過後は、この都道府県知事の関与なく、事業が
継続している限り納税が猶予される仕組みとな
っています。
(注) 事業承継後5 年間は、後継者の信用力が弱く、
経営状況も一般的に不安定になると考えられ
ることから、都道府県知事が事業継続を確認
するための期間として経営承継期間( 5 年間)
が設けられています。
 非上場株式等についての納税猶予を受けるた
めには様々な要件が設けられていますが、その
中で経営承継期間にのみ設けられている要件は、
主として、代表者要件、同族過半要件、同族内
筆頭株主要件など会社形態独自の要件となって
おり、こうした概念がない個人形態の事業承継
には、法人形態と同様の要件を設ける必要はな
いため、あえて経営承継期間に相当する期間を
設けないこととされています。
⑶ 雇用確保要件
 非上場株式等についての納税猶予制度では、
中小企業が雇用の確保を通じて地域経済の活力
を維持するための重要な役割を担っているとい
う思想のもと、経営承継期間(事業承継後5 年
間)は事業承継時の平均8 割の雇用を確保する
ことが要件とされています。
 一方、個人事業者の場合、法人並みに一定規
模の雇用を確保している事業者もいますが、一
般的には事業者単独あるいはその親族等の少人
数で事業を営んでいるのが実情と考えられます。
 こうした両者の事業規模の違いに着目し、個
人の事業用資産についての納税猶予制度では雇
用確保要件を設けないこととされています。
⑷ 全部免除事由
 非上場株式等についての納税猶予制度では、
納税猶予適用者が一定の重度障害を負った場合
には、納税猶予の継続要件の一つである認定会
社の代表者要件が緩和されています(措法70の
7 ③一等)が、個人の事業用資産についての納
税猶予制度では、法人という組織形態ではなく、
個人が自ら事業を担っているという個人事業者
の特性も考慮して、同じ程度の障害を負ったこ
とにより事業を継続することができなくなった
場合には、猶予税額の全額が免除されることと
されています(措法70の6 の8 ⑭四、70の6 の
10⑮三、措規23の8 の8 、23の8 の9 )。
(注) 非上場株式等についての納税猶予制度では、
一定の重度障害の場合の一部要件緩和のほか
に災害等が発生した場合の要件緩和措置が講
じられています(措法70の7 ~ 等)。これ
は、非上場株式等についての納税猶予制度では、
災害により生じた物理的損失のみならず経済
的損失等によっても猶予税額が確定してしま
う場合があるためです。こうした違いから非
上場株式等についての納税猶予制度と同様の
措置が個人の事業用資産についての納税猶予
制度では講じられていませんが、災害により
特例(受贈)事業用資産について一定の被害
を受けた納税猶予適用者は、災害被害者に対
する租税の減免、徴収猶予等に関する法律第
4 条の規定により被害を受けた部分に対する
猶予税額が免除される場合があります。
⑸ 納税猶予対象資産の担保提供
 非上場株式等についての納税猶予制度では、
本来国税通則法上の担保として認められていな
い非上場株式等の担保提供を例外的に認めてい